訳 詞 と 考 察

la civilisation faible
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1990年代アメリカのオルタナティヴ・ロック勃興を考える時、トゥールの果たした役割の大きさは無視できない。一見簡素ながら、無限に増殖し続けるかのようなリフ中心の音構成と、呪術的にまとわりつくメイナード・ジェイムズ・キーナンのヴォーカル。型に囚われない独自の構築美を編み出した彼らは、世間が評するところの「プログレ」あるいは「メタル」の範疇を始めから越えていた。
さらに重要なのは、人間性をめぐるテーマの重さ。音の上っ面以上に「精神的にヘヴィな」ロックを追求するトゥールは、人間の“影”を極大化する。しかしそこには、世界を覆う暴虐の力に抗して新たなヒューマニズムに至る、“ポジティヴな影”が包み込まれているのではないだろうか。

     訳 詞   
  
    Stinkfist   (1996)
    Ænema   (1996)
    H.   (1996)
    The Grudge   (2001)
    Parabol/Parabola   (2001)
    Lateralus   (2001)
    Intolerance   (1993)
    Undertow   (1993)
    Opiate   (1992)   
    Vicarious   (2006)
    Lost Keys / Rosetta Stoned   (2006)   
    Right In Two   (2006)



     DATA   
   ・「Lost Keys/Rosetta Stoned」は参照した原詩も恐らく不正確な上、難解を通り越して意味不明な言葉使いが多いため、当サイト内のほかの訳詞に比べても、格段に推量や私的な印象解釈に頼っていることをお断りしておきます。

・ブログ弱い文明にて、「Vicarious」の訳詞を紹介した記事はこちら

・原詩が読めるサイトの一例  http://www.toolband.com/(公式サイト)・・・toolbandから入ってページ上部「ALBUM - LYRICS」で各アルバムの歌詞。ただし2001年『LATERALUS』までで、最新の『10000days』は掲載されていない。

・1996年のアルバム『ÆNIMA』は、1994年に夭折した毒舌のスタンダップ・コメディアン、ビル・ヒックスに捧げられたもの。歌の内容も彼の人生・世界観を直接・間接に扱っているが、決して単純な英雄礼賛ではなく、批判的な視点も含んでいる。タイトル曲「Ænema」(iではなくe)の中のフレーズ「Learn to swim, I'll see you down in Arizona Bay」もヒックスの有名なアイロニーの一つ。
 また、『ÆNIMA』に限らず、メイナードの歌詞にはヒックスの影響が随所に見られるという指摘もあり、この人物が日本でほとんど知られていないだけに興味深い。ラッセル・クロウ主演の伝記映画が作られるという情報は、まだ企画段階のものらしいが、ぜひ実現してほしいと思うトゥールのファンは多いのではないだろうか。
 ちなみに、「Vicarious」のPVに登場する、煙草をくゆらす背広姿の「天使」も、元々ヒックスのイメージ写真に使われていたアイデアなので、あのキャラクターはまさにヒックスを表していると考えていい。   Bill Hicks公式サイト



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