雪原の橇は重く 狼どもは大胆になるばかり
おまえは不安げに仲間たちを見やり
つま先で水の深さを測るように
友情の在りかをまさぐるが
彼らは意味深長な視線を返しつつ
財宝の方へとにじり寄る
つまりな ボブ
人にはそれぞれ値打ちってものがある
おまえのはかなり低いってこと
歴史なんてたかが知れてる
太陽だってちっぽけな星の一つ
貧乏人は とある植民地の市場で
てめえの腎臓を売りに出す
ケ・セラ・セラ あれがおまえの新しいフェラーリか?
いいねえ でも俺はF50が出るまで待つぜ
人殺しに反対するのに
ユダヤ人になる必要はない
涙が目を焦がす 涙が
ムスリムかクリスチャンか 導師か法王か
説教師だったか詩人だったか忘れたが
誰の言葉だったろう「どんな種族であれ
したい放題にできる自由など手にすれば
すなわちこれを腐らせる」とは
ゆうべTVで観た
あご鬚と 去らない苦痛を抱えたベトナム帰還兵が
20年の時を経て かの地を再訪した
そこで出会ったもの
自分達が作り出したホルマリン漬けの奇形児
バイクにまたがるベトナム人
やんちゃなちびっこベトナム人
柔和で気さくなベトナム人
みんなかつての敵と同じ目をしていた
涙が 涙が目を焦がす
これはどういう意味なんだ
電波に乗って飛んで来た
涙がちょちょ切れる展開
なぜこんなにも心動かされ
なぜこんなにも心が騒ぐのか
たかが人間同士じゃないか
たかが人間と人間じゃないか
俺の目を焦がす涙 ―これはどういうことなんだ?
TVが俺の急所を突いた
涙なしには観られない
人殺しに反対するのに
ユダヤ人になる必要はない
涙が目を焦がす
ムスリムかクリスチャンか 導師か法王か
説教師だったか詩人だったか忘れたが
誰かが書いていた
どんな種族であれ したい放題にできる自由など手にすれば
すなわちこれを滅ぼすと
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